比留間久夫 HP

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テレヴィジョン≪マーキームーン≫



高校のときは、
日本のロックやら、ストーンズとか聴いてて、
大学に入ったころ、遅ればせながら、
パンクやニューウェイブの洗礼を浴びた。
友人から借りたTELEVISION の≪MARQUEE MOON≫ が、
最初だった気がする。

1992年に思潮社から発行された、
『僕にはこう聴こえる ロックオリジナル訳詞集3』という本がある。
ぼくはそこに、TELEVISION の≪VENUS≫という曲を採りあげた。
このアルバムの2曲目に入っている歌だ。
無断掲載してみよう。


  不思議な体験だった。
  世界が紙切れみたいに薄っぺらに見えた。
  景色が目の前を右に左に流れていった。
  音もなく、
  質感もなく。
  ぼくは景色の中にいる自分を観ていた。
  唯一の人間としてではなく、
  唯一の人間などいないという景色の中に。

    すると、どこからか、声が聴こえてきた。
   「何もしなくていいのよ、すべきことなんて何もないわ」

  ぼくは巨大な虚無の中に吸い込まれていった。

  悲しくはなかった。
  いや、悲しかった。でも、それを悲しみというには、
  あまりにも透明で静かだった。
  ぼくは世界がどういうものなのか、わかった気がした。
  理由もなく、涙がこぼれてきた。


  しかし、ぼくはそこを抜け出た。
  ぼくは、何かをしようとした。



・・・まぁ、そのときはこんなふうに聴こえたのでしょう。
この曲がいちばん好きでした。

同書に、vo.トム・ヴァーレインの声についても、書いています。
再度、無断掲載。


  トム・ヴァーレインの声は、
  絶縁不良の金属製コイルみたいに、
  幾重にも捩じ曲がり、震えっぱなしだ。
  まず、歌いたいという欲求があり、
  その前で歌いだせず、あえぎもがくように逡巡して、
  それでも喉から嘔吐のように歪んだ叫びを吐き続ける、
  彼の姿がある。
  歌うという行為は確かに『表現』であるのだが、
  絶えることのない『自問』ともいえるのだ。
  そして、その自問する姿が、声として伝わってくる。
  彼の言葉ではなく、その姿勢に揺り動かされるのだ。


あと、テレヴィジョンの魅力は、
トムとリチャード・ロイドのギターの絡みでしょう。
まるで、金属と電気と紙でできたアラベスクのようです。



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