- 2014/03/05
- Category : MUSIC 100
テレヴィジョン≪マーキームーン≫
高校のときは、
日本のロックやら、ストーンズとか聴いてて、
大学に入ったころ、遅ればせながら、
パンクやニューウェイブの洗礼を浴びた。
友人から借りたTELEVISION の≪MARQUEE MOON≫ が、
最初だった気がする。
1992年に思潮社から発行された、
『僕にはこう聴こえる ロックオリジナル訳詞集3』という本がある。
ぼくはそこに、TELEVISION の≪VENUS≫という曲を採りあげた。
このアルバムの2曲目に入っている歌だ。
無断掲載してみよう。
不思議な体験だった。
世界が紙切れみたいに薄っぺらに見えた。
景色が目の前を右に左に流れていった。
音もなく、
質感もなく。
ぼくは景色の中にいる自分を観ていた。
唯一の人間としてではなく、
唯一の人間などいないという景色の中に。
すると、どこからか、声が聴こえてきた。
「何もしなくていいのよ、すべきことなんて何もないわ」
ぼくは巨大な虚無の中に吸い込まれていった。
悲しくはなかった。
いや、悲しかった。でも、それを悲しみというには、
あまりにも透明で静かだった。
ぼくは世界がどういうものなのか、わかった気がした。
理由もなく、涙がこぼれてきた。
しかし、ぼくはそこを抜け出た。
ぼくは、何かをしようとした。
・・・まぁ、そのときはこんなふうに聴こえたのでしょう。
この曲がいちばん好きでした。
同書に、vo.トム・ヴァーレインの声についても、書いています。
再度、無断掲載。
トム・ヴァーレインの声は、
絶縁不良の金属製コイルみたいに、
幾重にも捩じ曲がり、震えっぱなしだ。
まず、歌いたいという欲求があり、
その前で歌いだせず、あえぎもがくように逡巡して、
それでも喉から嘔吐のように歪んだ叫びを吐き続ける、
彼の姿がある。
歌うという行為は確かに『表現』であるのだが、
絶えることのない『自問』ともいえるのだ。
そして、その自問する姿が、声として伝わってくる。
彼の言葉ではなく、その姿勢に揺り動かされるのだ。
あと、テレヴィジョンの魅力は、
トムとリチャード・ロイドのギターの絡みでしょう。
まるで、金属と電気と紙でできたアラベスクのようです。