比留間久夫 HP

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Memory Motel

   『思い出ホテル』

可愛いハンナは桃のようにふっくら抱き心地が良くて
瞳は薄茶色 鼻はすこしカーブしてた
俺たちは『思い出ホテル』で心寂しい夜を過ごした
ほら 海の近くによくある安っぽいやつさ
その晩は息をのむような星空だった
海辺に降りると彼女の髪は波しぶきでビショ濡れになったんだ

ハンナは蜂蜜みたいに甘かったけど
どこか疲れた目をしてて 笑うと歯並びが悪かった
彼女は俺のギターを取って 弾き語りはじめた
俺のためだけに歌ってくれたんだ
脳ミソまで震えるような歌だった

 彼女はよくある思い出の一つに過ぎない
 毎日のように相手を変えてた頃のさ
 いまじゃ彼女はよくある思い出の女の一人
 でも あの頃はそこに意味があると思ってた

 あの子は自分の心をやり過ごし 気分転換するのが上手だった
 でも 自分自身の心はちゃんと持ってたな
 その心を扱い慣れていた

彼女はトラックを持ってて 緑と青に塗り分けていた
タイヤはツルツルに擦り減っていた
乗りこんですこし走ったとき
「どこへ向かってるんだ?」と俺は訊いた
「ボストンに決まってるわ バーで歌うのよ」彼女は応えた
俺はその日 南部に飛ばなきゃならなかったんだが・・
ルイジアナのバトンルージュにな
道がひどくて 神経がもうズタズタになった
テキサス州では聖アントニオの薔薇が迎えてくれたけど
長い乗車で俺はケツがずっと痛かった

 彼女はよくある思い出の一つに過ぎない
 毎日のように相手を変えてた頃のさ
 いまじゃ彼女はよくある思い出の女の一人
 でも あの頃はそこに意味があると思ってた

 あの子は自分の心をやり過ごし 気分転換するのが上手だった
 でも 自分自身の心はちゃんと持ってたな
 その心を扱い慣れていた

出発して7日目 さすがに俺の目もどんよりしてきた
もう1万マイルは走ったはず 通り抜けた州は15を超えた
あらゆる女が俺の心から消えてゆくようだった
毎日 飲んだくれて 姦りまくって ついには錯乱して叫んだ
「22階に響き渡るこのバカでかい哄笑は何だ?」
俺の友達がドアを蹴破ってなだれこもうとしていた
そう、『思い出ホテル』の心寂しい夜がずっと続いてたんだ



60年代後半の香りが漂うラブソングかな。
性の革命やら女性の解放やら『第二の性』やらノーブラやらフリーセックスやらヒッピーやらサイケやら・・
自分はそれらが通り過ぎた後の世代だから、リアルには知らないけど、まぁすこしは余韻や残骸が残っていた。
ストーンズは言葉よりサウンドのイメージが強いけど、ミックもキースもいい詞を書くよな。
ストーンズのバラードでは『野生の馬』と並んで好きな歌。
20歳のころ、よく聴いてました。
(*サビの一部は阿部嘉昭さんの名訳を引用させていただきました)



                   (2016.12.2 記)

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