比留間久夫 HP

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Rose Garden

『薔薇の花園のように見えるこの世界で』

ごめんね
わたし あなたを薔薇の花園に招待した覚えはない
そう 人生は晴れの日ばっかじゃない
ときには雨の日だってある
大切なのは 晴れてるときに雨の日について考えること
「転ばぬ先の杖」を手に入れよう

  だって わたしはあなたに
  バラ色の未来なんて約束してないもの

あなたに真面目な顔で嘘をつくこともできる
例えば 人生は結局プラマイゼロとか
チャンスはみんなに平等にあるとか
人の命はこの地球より重たいとか
あなたの人権と自由は尊重されてるとか
あなたの前には無限の可能性が広がってるとか
まぁ、うまく泳げるときもあるでしょう
海だっていつも荒れてるわけじゃない
でも、多くは生まれたときから決まってるの
あなたが見ることができる景色 あなたに与えられた空間
つまり「分を知る」ことがうまく生きる秘訣

だから 欲張らないで 慎ましく生きましょう
与えられた場所で精いっぱい輝きましょう
薔薇の花園のように見えるこの楽園で
それなりに愉しく生きていきましょう

正義や真実や愛がこの世界を形作ってるなんて
ゆめゆめ思わないこと
だって みんなが赤いシャツを着て愉しく踊ってるときに
一人白い服を着て 難しい顔で 腕を組んでたら
とても目立つでしょう
神様は和を乱す身勝手な人間を絶対に見逃してはくれないわ
「朱に交われば朱くなる」よ
「長いものには巻かれろ」よ
あなたも明日からはこの舞台で一緒に愉しく踊りましょう

広大に見えるこの海を賢く渡っていきましょう
いつ来るかわからない嵐の準備をしっかりしながらね
自分の身は自分で守るのよ
みんなで薔薇の花園のように見えるこの楽園で
それなりに愉しく暮らしていきましょう


 
中学生のとき、家にレコードがあった。
兄が買ったものだ。
統合失調症(当時は分裂病)の少女の再生を描いたハナ・グリーンの『デボラの世界』はとても好きな小説だ。
原題は『I never promised you a rose garden(わたしはあなたに薔薇の花園を約束したわけではありませんよ)』という。
女性精神科医がデボラにこの世界で生きる覚悟を問うときに言う台詞だ。
小説の発表は1964年で、リン・アンダーソンの歌の発売は1971年だ。
小説から歌のタイトルを取ったとは思えないから、こういう言い回しが欧米には昔からあるのだろう。
歌の内容はウーマンリブの走りみたいなものか。
「わたしは男たちが望む従順で貞淑な妻にはなりません。対等な人間同士でありたいの」という思いを軽快で楽しいカントリーミュージックに乗せて歌ったナンバーだ。
あれから半世紀近く。ウーマンリブの目標はたぶんその多くが達成されただろうから(笑)
自分は明るい歌声で、こんな内容が歌われてたら面白いだろうなという視点で、最近の思いを胸に(笑)意訳してみた。
   ・
PS:情報をいろいろ検索してたら、ある精神科医の人が書いたこんな文を見つけた。短いから、読んでみてください。
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~clipsyst/rivier02.pdf

https://www.youtube.com/watch?v=2-eclUz-RYI

                     (2018.5.8 記)

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