- 2012/02/16
- Category : 自作品紹介&解説
YES・YES・YES
去年のいまごろ、50歳を過ぎて、
これから、どーしよーかなって思って、
とりあえず、昔のものを整理処分することにしました。
そのとき、久しぶりにちょっと読み返しました。
基本的に、読んでて、恥ずかしいです。
あと、すぐにあれこれ書き直したくなって、
(実際に鉛筆で直しを入れたりして)、
なかなか前へ進まない。
一冊、最後まで、ちゃんと読めません。
だから、自作品を紹介・解説しようにも、
書けません。
昔、月刊カドカワって雑誌でスペシャルを組んでもらったときに、
喋った内容を加筆した自作品解説があるから、
それをまた、すこし加筆訂正して、載せます。
まずは、『YES・YES・YES』
この小説を書いたきっかけというと、
そうですね、何か一つ形に残したかったのかな。
それまでやってたバンド活動に挫折して、
ほかに何もすることがない、
その空白を埋めるみたいな感じで書き始めたのが、24歳ごろ。
完成したのが29歳だから、5、6年もかかったわけですね。
手始めに、国語辞書を端から端まで読んで。
好きな言葉や気になった表現をノートに書き出して、一文、作って。
まずは日本語をちゃんとおさらいしようと。
それから、古今東西の名作といわれる小説を片っ端から読んで、
感想文を書いて。
感想を言葉にすると、自分が思ったことや、
感じたことがはっきりしてくるんですよ。
この作品のどういうところが好きか、嫌いか。
また、どういうところに強く深く揺り動かされたか。
また、それは何故なのか?
・・・そのうち、自分が書きたいものが、おぼろげに見えてくるんです。
すぐに書き始めたいって思いは強かったけど、
そういう作業を半年ぐらいして、
自分の中に『自分の小説』が立ち上がってくるのを待ちました。
でも、小説をちゃんと書くなんて、ほとんど初めてだったから、
試行錯誤の連続でした。
何回も同じところを書き直しながら、勉強してったって感じですね。
書くことでいちばん難しかったのは、
自分の気持ちに正直に素直に書くこと。
どうしても、テライやキドリが入っちゃうんですよ。
「うん、とっても気持ちいい!」なんて書いたら、
ホント、バカだって思われるんじゃないかって(笑)。
それをどうにか克服できたとき、一筋の光が見えたというか(笑)。
自分にいま書けることを自分なりにリミットで書こうと、
限界を認めたってことかな。
最初はね、舞台になってる『街』に来る前、
主人公のジュンが音楽活動をしてたころの話もついてたんです。
その後、『ハッピーバースディ』の登場人物の、
エバとバンビが絡む物語に変わって、
最終的にジュンの『街』の生活を中心とした、
いまの『YES・YES・YES』の形にまとまったわけですけど、
自分としてはまだ70%くらいのデキでしかないって気持ちのほうが強くて、
受賞する自信はありませんでしたね。
二次選考まで残ってくれれば励みになるかなって感じで。
ええ、セックスシーンはかなり騒がれました。
でも、書いてるときは、スキャンダラスなことを書いてるなんて、
意識はなかったんですよ。
もう何回も読み直して、頭が麻痺してたっていうか。
ただ、新人賞を獲っても、売れなきゃしかたがないって思ってたから、
ある程度、話題性を狙って、書いたのも事実です。
まわりの人からも、よく指摘されるんですが、
その後につながるようなテーマが、出ている作品だとも思います。
暴力の問題をいかに克服するかとか、
汚いものの中に宝石を見つけようとする志向性とか(笑)。
また、夜に独りでいられない人間への興味とか。
・・・とはいえ、それはいま思うことであって、
書き始めたころは、テーマうんぬんというよりは、
各章ごとに書きたいことを念頭に置き、
心の思うがままに進めていったような記憶があります。
で、それら混沌とした断片が、
交響曲のようにやがて大きなものに統合されていき、
自分でも予期しなかったような『詩』なり『歌』なりが立ち現われてくれたら・・・
そんなことを願いながら書いていた気がします。
読み返すと、接続詞とか多くて、ヘタだと思うし、
鼻につくところや、要らないテレとか、いろいろあるけど、
また、もっと書き直して、70%を100%に近づけたかったなとも思いますけど、
じゃ、どこをどう削れば、良くなるのか、
どこをどう書き足せば、もっと完成に近づくのか、
と訊かれると、
・・・そこに、確固とした自信のある判断を下せる自分はいない、
というのが、いまの実感でもあります。
【写真左から、イタリア語版、英語抜粋版、文藝賞最終選考の製本】
1 Comment
無題
- nkさん
- (2012/04/19 21:13)
- [コメントを編集する]
ごく平凡なOLだった私が、どうしてこの小説にのめり込んだのかわかりませんが、心臓の奥をきゅっとつかまれたような感覚と、覗いたことのない世界とジュンの言葉が胸に残ったのかもしれません。
当時私が差し上げた拙い感想の手紙に、いつも丁寧に返信してくださってありがとうございました。
また書いてくださったら、どんなに嬉しいだろうとおもいます。
こんにちは。
- HIRUMA ULTRA
- (2012/04/20 17:45)
時は流れて・・・です。
小説はそのうち書くかもしれません。
どうもありがとうございます。
でも、その前に、ブログをすこしは更新しなくちゃですね(苦笑)。