比留間久夫 HP

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ベスト・フレンズ

下でも書いてるが、
もうこれは書き直したくてしようがない。
特に『16の夏』と『あまりにー』。
文庫化のときに、ちゃんともっと考えて、
直すべきだった。


 『ベスト・フレンズ』

これは、僕にとって描ける世界が広がった、
過渡期というか、踏み台となったような短編集です。
1991年に『文藝』に発表した、
4つの作品が収められてるんですが、
短編を書くのは、これが初めてで、
それぞれ、とても苦労して、書いた記憶があります。

『ロマンティック』は、
当時、興味を持ち始めたトラウマが、
色濃く、濃過ぎで(笑)、出ています。
それに、ラストの胸が悪くなるようなシーン、
ホント、胸が悪くなる思いで、
書いてた記憶がある。
主人公のトラウマの深刻さを表現するには、
思いきり嫌悪感を催させる描写じゃないと、
ダメだと思ったんです。
でも、そこを書けたとき、
なんかまた光が見えたというか(笑)、
自分はこういう嫌なシーンも書けるんだ、みたいな。
発見というか、可能性というか。

そして、それは、
『16の夏』に続いています。
これはこの後、『100%ピュア』の原型になるんですが、
暴力をテーマとした、リアリティのある、
フェアリーテールを書こうと思ったんです。
人工的な小説空間を構築し、ナイトメアみたいな感じで。
暴力への畏怖、
その裏返しである悲劇的な出来事への憧憬、
女性憎悪、フェミニズム・・・
当時、考えてたことが何の解決もつかないまま、
ぐちゃどろっと渦巻いてる感じです(笑)。

だけど、『ベスト・フレンズ』は、
いま、まったく読み返さないんですよ。
書き直したくて、しかたないから。
いま、書いたら、すべて、
まったく違ったものになるような気がします。


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1 Comment

そうかなあ・・・。

「あまりにー」は私にとって「YES~」の次に好きな作品だったのです。すごく偉そうなことを言わせてもらえば、「あまりにー」は本来比留間さんが描きそうな、らしい世界であったような気がします。なんというか、ちょっと砂を噛むような退廃的な空気の中に、あれっ、妙に懐かしい感じがする・・というような。すみません、なんだかよくわかりませんね(笑)
比較するわけでも、似ているわけでもありませんが、ブレッド・イーストン・エリスの「ルールズ・オブ・アトラクション」を読んだときに味わった感覚とちょっと似ていたんですよね。次にもし書いてくださる時がきたら、個人的には「あまりにー」のような作品を望んでおります。
こんにちは。
  • HIRUMA ULTRA
  • (2012/05/04 17:05)
どうもありがとうございます。
『あまりに淫靡な、あまりに解剖学的な』は、デヴィッド・ボウイの『ロックンロール・ウィズ・ミー』にインスパイアされた作品だったかな。
いまでもこの曲は大好きで、良い感じに日本語の歌詞をのせて、ちょっと斜に構えた女の子に歌わせたいなぁ・・・なんて考えてたりします。あとは『スターマン』もいいな。ロキシーミュージックの『恋はドラッグ』もいい。T.REXの『ゲット・イット・オン』もいい。このあたり、そーゆー女の子が純な感じで歌うと、とってもいい感じになりそうな気がする。
・・・と、話が脱線しました(笑)。
『あまりにー』は、ちょっと甘ったらしい感じになっちゃったのが、自分の中ではいやだったのかな。書き直したら、もっとソリッドな、自分がイメージするロックンロールの形に近づけられるのに、みたいな。
でも、日の目を当ててくださり、ありがとうございます。
産みの作者にさえ忘れられているこの子もきっと喜んでると思います。

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