- 2020/07/21
- Category : 洋楽かなり意訳
America
「付き合おう。結婚して2人で未来を築いていくの」
「ああ。ちょっとした蓄えならこのバッグの中にあるし」
それで僕らはタバコ1箱とミセス・ワーグナーのパイを買って、
アメリカを探しに歩き出した。
ピッツバーグで長距離バスに乗りこみながら、
僕はキャシーに言った。
「今となっちゃ、ミシガンにいた頃が夢のようだね」
サギノ―からここまでヒッチハイクで4日もかかった。
僕はアメリカを見つけに来たんだ。
バスの中では大笑いさ。
乗客をネタにして、ふざけて遊んだ。
「あのギャバジンスーツの人、スパイよ」
「気をつけろ、やつの蝶ネクタイはカメラだ」
「タバコを投げてくれないか。レインコートに入ってるだろ」
「1時間前に2人で最後の1本を吸っちゃったじゃない?」
僕はしかたなく窓の景色を眺めた。
彼女は雑誌を読みだした。
開けた草原に月が昇ってゆくのが見えた。
「キャシー・・・行く先がわからなくなっちゃったよ」
僕は彼女が眠ってるのを確かめてから、つぶやいた。
「心に穴が空いたようで痛いんだ。どうすればいいのかもわからない・・・」
僕はニュージャージーの高速を走る車を数えていた。
みんな、アメリカを探しにやってきたんだ。
みんな、アメリカを探しにやってきたんだ。